ベルばら連載当時のコミックスは全十巻でしたが、文庫版は全5巻に収められており、文庫5巻には外伝/黒衣の伯爵夫人が収録されています。
当時胸躍らせながら読んでいた元少女たちが今読み直しても懐かしく、そして色褪せない名作に再び酔いしれることが出来るでしょう。
そして漫画のジャンルが細分化され、自分の好みの漫画しか読まなくなった現在の漫画好きの若者たちも、食わず嫌いを超えて読み始めたら、その面白さに最後までページを繰る手が止まらないでしょう(web読みかもしれませんが表現もあえて時代を揃えてみました)。
少女漫画の金字塔の誉れも高い「ベルサイユのばら」を文庫版の巻別にあらすじと見どころを追っていきましょう。
ベルばら1巻のあらすじと見どころ
物語は1755年、代々フランス王家の軍隊を将軍として統率してきたジャルジェ家に6番目の娘が誕生したシーンから始まります。
男子が生まれなかったことに落胆したジャルジェ将軍でしたが、この末娘にオスカルと名付け、男の子として育て、軍人として跡継ぎにすることを決め、剣術などを仕込んでゆきます。
彼女にはいつもジャルジェ家に引き取られた平民身分の幼なじみアンドレが付き添っています。
14歳になったオスカルは、フランスとオーストリアの同盟を強固にする政略結婚のため、フランスの王太子に嫁いできた同い年のオーストリア皇女マリーアントワネットの近衛士官として彼女に仕えます。
マリーは天才政治家マリア・テレジアの娘と思えない程の遊び好きで、実母やオスカルは不安を覚えます。
しかしアントワネットはルイ15世の愛妾デュ・バリーを毛嫌いするあまり、同名の危機さえ招くほどの誇りの高さも併せ持っているのでした。
宮廷の華と輝くアントワネットに対し、夫の王太子は引っ込み思案で錠前づくりが趣味でパッとしないので、夫婦として上手くいきません。
ある夜アントワネットはオスカルをお供に連れ、お忍びでパリで開かれた仮面舞踏会に参加。そこにはスウェーデンの貴族の子息フェルゼンがおり、三人は運命の出会いをします。
この時からアントワネットとフェルゼンは魅かれあいます。
宮廷に出入りするようになったフェルゼンとアントワネットが交わす視線は熱く、隠しているつもりでも噂が広まってゆきます。オスカルもまたフェルゼンに魅かれていますが、あくまで噂を心配する友人として振舞い、フェルゼンは友情に感謝するばかりでオスカルの気持ちには無頓着です。
ある日ルイ15世が天然痘に罹り、闘病ののち逝去。
19歳の王ルイ16世の即位とともに、マリーアントワネットは18歳の王妃になります。
フェルゼンは彼女を気遣い、ベルサイユを去ります。寂しさもあり、誰の指図も受けずに自由にふるまえるようになったアントワネットはお気に入りのポリニャック伯夫人の意のままに操られ、大金や夫人の身内へ大臣の地位などを貢ぎ周囲の反感を買います。
貴族が豪奢な生活を楽しんでいる頃、パリの庶民は生活苦にあえいでいます。
母、姉と暮らすロザリー一家も例外ではありません。しかし野心家の姉ジャンヌは家族を見捨て、お人好しの貴族の老婦人を丸め込み、引き取ってもらうことに成功。
失意のロザリーは、ポリニャック夫人の馬車に飛び出して引かれてしまった母親まで失います。ロザリーは仇を討とうと誤ってオスカルの母に切りかかったのが縁でジャルジェ家で暮らすことになります。
ジャンヌは恋人ニコラスと組んで悪だくみをする最中、ドレスを着たロザリーと偶然再会してしまい…
そしてフェルゼンが4年ぶりにベルサイユへ戻ってきます!
主要な人物がベルサイユに登場してきました。
アントワネットは王妃になり思う存分権力を行使しますが、義務についてはこれっぽちも考えません。
まだまだ物語は序章といったところです。
1巻をさらに詳しく、章ごとにあらすじと感想をまとめた記事はこちらです。
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ベルサイユのばら(ベルばら)ネタバレ!漫画1巻あらすじと感想まとめ
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ベルばら2巻のあらすじと見どころ
ポリニャック夫人は無邪気に自分を慕うアントワネットを手玉に取って金や地位や領地を手に入れ続けます。彼女にとって真っ向から歯向かってきたり、ポリニャック夫人を母の仇と憎む少女ロザリーを引き取ったりしているオスカルは目障りな存在です。
ポリニャック夫人とロザリーは互いが実の母娘だと知りショックを受けるのでした
ポリニャック夫人はわずか11歳の娘シャルロットを公爵と結婚させようと画策し、妹に同情したロザリーはシャルロットと心を通わせます。
しかしシャルロットは結婚が嫌なあまり自ら命を絶ってしまいました。
王妃とフェルゼンは溢れる気持ちを抑えらず心を通じ合わせてしまいます。
そしてフェルゼンはスキャンダルが大きくならないようにとアメリカ独立戦争へ志願をして赴きます。
その間、王妃は懐妊し、第1王女マリー・テレーズを出産します。
そして虚しさの中、プチトリアノンという小宮に移り、お気に入りの取り巻きと遊ぶことにうつつを抜かし始めます。
戦争から帰ったフェルゼンは王妃への愛の為に誰とも結婚しないとオスカルに話しますが、オスカルのせつない視線には全く気付かないのでした。
ロザリーの姉ジャンヌと夫ニコラスは最高級の首飾りを騙し取るためにロ-アン大司教に詐欺を仕掛けます。ばれた後もジャンヌは罪を王妃になすりつけ、偽の暴露本を出版して庶民からの人気を得てしまいます。
シャルロットの死後、ポリニャック夫人はすぐにロザリーを引き取りたいと申込み、その目的がシャルロットの代わりとして公爵と結婚させるためだったと分かり、オスカルを守るためポリニャック家に行くも、ロザリーはますます夫人を憎み、一人パリへ戻ります。
ある晩に開かれた舞踏会に、オスカルはドレス姿で向かいました。それはフェルゼンへの思いを断ち切るためにたった一度だけ装って彼と踊るためでした。フェルゼンが踊りながら口にしたオスカルへの尊敬と信頼の言葉に、これで諦められるとオスカルは涙するのでした。
フェルゼンの諫言でアントワネットには王妃としての自覚が出てくるも、王妃への民衆の反感はあまりにも募っています。
この頃「黒い騎士」と名乗る怪盗が貴族から宝を盗んでいました。アンドレを囮にしたオスカルが怪盗の後を追うと国王のいとこオルレアン公の館に消え…。
ポリニャック伯夫人とジャンヌの女二人の逞しさと欲深さにあっけにとられます。
対して彼女たちに利用される王妃はプチトリアノンで楽しく田舎ごっこ、お芝居ごっこ。
赤子の手を捻るようなものでしょうね。
ベルばら3巻のあらすじと見どころ
黒い騎士を捕まえようと追う中で、アンドレは左目を負傷し、ロザリーは人質として連れ去られてしまいます。救出に行ったオスカルと黒い騎士がもみ合いになり、オスカルを助けようとロザリーは拳銃で黒い騎士を討ちます。しかしその正体がかつて母の葬儀を手助けしてくれた記者ベルナールと分かり、看病するロザリーとベルナールは恋に落ちるのでした。
オスカルは大事なロザリーを幸せにしてくれとベルナールに託すのでした。
もともと貴族だけが甘い汁を吸う社会に疑問を持っていたオスカルはベルナールと話すうちにますますその思いが大きくなり、近衛隊からの降格を願い出ます。
そしてフランス衛兵隊の部隊長となりますが、粗野で貴族に反感を持つ彼らはオスカルに従おうとしません。
潰されなかった右目も徐々に見えなくなってきているアンドレですが、衛兵隊にも一緒に付いてきてくれました。
近衛隊をやめてもオスカルは脊椎カリエスの静養の為ムードン宮に移り住んだ王太子ルイ・ジョセフと親交を持ち励まします。
自分に従ってくれなかった衛兵隊ですが、全身全霊で自分たちに向かい、銃や食事を家族のために回していたことを知り涙するオスカルに徐々に心を開き、情感として認めるようになってゆきます。
平民や革命思想に理解を深めるオスカルの身を案じるジャルジェ将軍はオスカルを結婚させようとします。求婚者として名乗り出たのは近衛隊時代の部下、ジェローデル。ジェロ―デルはアンドレの気持ちに気付いており、同情するような余裕を見せるので、アンドレはかえって深く傷つきます。
アンドレはオスカルと毒物での心中を図りますが、昔オスカルに命を救われた時に自分はオスカルの為に命を捧げると誓ったことを思い出し、己の身勝手さを恥じるのでした。
ある日目立つ馬車で出かけたオスカルとアンドレは市民に襲われますが、そこへフェルゼンが助けに入り、平民に憎まれているのを承知で名乗って二人を助けてくれます。
フェルゼンの危険よりもとっさにアンドレの命を優先したオスカルは自分の気持ちに気付きます。
オスカルはジェロ―デルに愛する人が不幸だと自分も不幸だからあなたと結婚は出来ないと伝えます。
ジェロ―デルは私もそうですと言って身を引くのでした。
王太子ルイ・ジョセフの病状は悪化し、オスカルと乗馬し最後の楽しい思い出を作るのでした。
オスカルは少しずつ平民たち立場に近づいてゆきます。
そしてアンドレへに対する自分の気持ちにも気付いてゆきます。
ベルばら4巻のあらすじと見どころ
衛兵隊のリーダー格のアランが休暇が明けても出勤しないので、オスカルが家を訪問するとアランは自殺した妹ディアンヌの死体に付き添っていました。婚約者が金持ちの娘に乗り換え、捨てられたディアンヌは自殺してしまったのです。アランは貴族の家系ですが、それでも貧乏だと辛い目に遭うのでした。
力の弱まった王室は平民の要求に押され、三部会を開催することを決定。
それぞれの思惑で三部会が埒が明かない中、王太子ルイ・ジョセフは点に召されます。
しかし王太子の葬儀のお金さえないと告げられ、アントワネットはいままでの散財の報いを思い知るのでした。
貴族たちに嫌がらせを受けてもかえってエネルギーをたぎらせ、政治を自分たちの手に握ろうとする平民たちのパワーを国王や貴族は抑えられません。貴族の一部は現王室から権力を奪おうと平民側についてもいます。
平民議員は三部会から締め出され、テニスコートの誓いを経て国民議会を開きます。
その邪魔をしろと命令を受け、オスカルと衛兵隊第1班は拒否。オスカルはその任を解かれます。ベルナールの協力を得て第1班の処刑も免れることが出来、オスカルと衛兵隊の絆は深まりました。
そしてこの不安な事件の中、オスカルとアンドレは愛を告げあい、恋人同士となりました。
王室とアントワネットが危機に陥る中、フェルゼンは王妃の為にスウェーデンからフランスへ戻る決意をするのでした。
オスカルは時々喀血するようになり、アンドレの目は見えなくなってきました。
平民の立場にも心を配る大蔵大臣ネッケルの罷免をきっかけに平民たちが武器を取って立ち上がります
オスカルの衛兵隊にも出陣命令がきます。平民たちに銃を向けることは出来ないとためらう兵たちですが、オスカルを信じて従うこと決めます。彼らはアンドレの目を案じて来ないように言いますが、アンドレのオスカルへの気持ちを理解し、俺たちの支持で動けよと力になってくれます。
自身の形見のようなオスカルの絵が完成します。その絵はアントワネットの嫁入りの際、護衛していた輝かしい若き日のオスカルをモチーフにした素晴らしいものでしたが、アンドレは見たくても見ることが出来ません。
そしてオスカルとアンドレは一夜を共にし、心の恋人同士となるのでした。
7月13日、ドイツ騎兵が民衆に発砲したのを皮切りに、暴動が発生しオスカル率いるフランス衛兵隊が駆けつけます。
平民側の勢いが戻ってきましたが、指揮官のオスカルさえ倒せばと、銃で狙われます。
その気配に気づいたアンドレは見えないながらも必死にオスカルをかばい、被弾して命を落としてしまうのでした。
アンドレを失ったことで自分も死んだと思いながらも平民の為にオスカルと衛兵隊はバスティーユの騒乱へ向かうのでした。
やっと恋人同士になれたオスカルとアンドレですが、歴史の大渦に飲み込まれ引き裂かれてしまいます。
ベルばら5巻のあらすじと見どころ
バスティーユの騒乱の中、軍人としての知識と経験を持つオスカルは平民側で必死に指揮を執ります。
しかしオスカルは、バスティーユ側に指揮官さえいなければあとは雑魚だと狙い撃ちされます。
オスカルはこれでアンドレのもとに行けると笑みを浮かべながら命を落とすのでした。
オスカルやフランス衛兵隊、名も無き平民たちの必死の戦いでバスティーユはとうとう陥落。
革命の炎は一気に燃え盛ります。
フェルゼンはルイ16世一家もとへ来て、彼らを救うために奔走します。
しかし彼が尽力したにもかかわらず、アントワネットの一家は亡命に失敗します。
フランスを見捨てようとしたと平民たちの怒りは増幅し、一家は捕らわれの身となります。
裁判にかけられた後、ルイ16世はギロチンにかけられます。
マリーアントワネットも子供達と引き離されたのち、裁判にかけられギロチンの露と消えるのでした。
アントワネットは裁判中も幽閉されていましたが、世話係にロザリーが付き、心づくしの世話をしてくれたことや、他の監視係や雑用係も優しくしてくれたことは最後の慰めになっただろうと思います。
【外伝/黒衣の伯爵夫人】
16世紀の末にハンガリアで600人もの少女の命を奪った伯爵夫人をモデルにしたストーリー。
オスカルの姉の屋敷を訪れたオスカル、アンドレ、ロザリーと、オスカルの姪っ子ル・ルー、オスカルに気のある地元の貴族娘カロリーヌが道に迷ってモンテクレール伯爵夫人の豪奢な館に泊めてもらう。
モンテクレール伯爵夫人は美貌の青年に仕立て上げた仕掛け人形を使って若い娘を殺しその生き血を自分の美を保つために浴びるのでした。
カロリーヌが最初に殺され、ロザリーとオスカルもまた狙われる。
しかし不思議な力を持つ、ル・ル―の働きによって九死に一生を得るのでした。
フランス革命は血の革命です。興奮した平民たちは国王と王妃の血を見ずには納得することはありませんでした。
黒衣の伯爵夫人はモンテクレール伯爵夫人と人形リオネルが実に美しいだけにとても怖いのですが、ル・ル―がお茶目で明るくて可愛いので救われます。