ベルサイユのばらのストーリーをじっくりと味わってみませんか?
不朽の名作としてその名を知らぬ者はいないと言ってもよい少女漫画「ベルサイユのばら」は1972年から1973年に週刊マーガレットに本編が連載されました。作者池田理代子が24~25歳の頃の作品です。
連載直後から大ヒット、のちに宝塚歌劇団で舞台化もされこちらも大ヒット、現在でもマイナーチェンジやスピンオフ版などを加えつつ上演し続けられています。
今年(2018年)で本編の連載終了から45年が経ちますが、ベルばらの輝きは今もなお色褪せておらず、人々を魅了し続けています。
激動の史実と作者が創作したキャラクターが見事にマッチし、架空のキャラも含めすべての登場人物に生命が吹き込まれ、あの過酷な時代を必死に生き抜く様が見事に描かれています。
時代とともに生き、歴史とともに散った美しき2輪のバラ、マリーアントワネットとオスカル、そして彼女たちに関わる人々の人生を描き切ることで、この作品は、人は時代に翻弄されたとしても精一杯自分の生を全うしなければならないと私達に教えてくれます。
文庫版は全5巻、初版は1994年とあります。
この文庫版を1巻ずつ章ごとの簡単なあらすじとそれについての感想を語っていこうと思います。
一緒に楽しんで下さいね!
【1巻1章】「新しい運命のうずの中に」のあらすじと感想まとめ
「新しい運命のうずの中に」あらすじその1
この章は物語の始まり、主要な人物の誕生と成長、そして出会いまでを描いています。
1755年にマリー・アントワネット、オスカル、フェルゼンという、歴史の渦の中で激しくもつれ合うことになる三人がそれぞれオーストリア、フランス、スウェーデンに誕生します。
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンはスウェーデンの大貴族の家の跡取りとして生まれ、容姿にも能力にも恵まれた貴公子として成長します。
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェはフランスの貴族で代々将軍を務めるジャルジェ家の6番目の娘として誕生します。美しい赤ちゃんだったにも関わらず、将軍家に跡取り息子が生まれなかったジャルジェ将軍は、この子に男名を付け、男として育て軍人にすることを決めます。
そしてマリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ド・ロレーヌ・オートリッシュはオーストリアに生を受けます。
母は女帝マリア・テレジア。天才政治家としてオーストリアを強国とし、ハプスブルク家を繁栄させた女傑で、マリーアントワネットは彼女の産んだ第9番目の子供です。
(※実際は11子ですし、お嫁入り前はマリア・アントーニアというドイツ語名でしたが、漫画ではウィーン時代もアントワネットと呼ばれています。)
アントワネットは幼少時から振る舞いが愛くるしく、周りの者をとりこにする天性の才がありました。その反面、真面目にお勉強するのは大嫌い。家庭教師たちを可愛くけむに巻き、勉強から逃げて遊んでばかりです。
母マリア・テレジアもアントワネットの性質を「考えることや勉強が嫌いで軽薄で浅はかな子」だと早くから見抜いていましたが、大政治家の皇女として生まれた以上、国際政治力学的な結婚の義務を免除するわけにはいきません。
プロイセンからの脅威を受けているオーストリアは長らく敵対していたフランスとの同盟を図ります。その関係を強固にするために娘アントワネットとルイ15世の孫ルイ・オーギュストとの結婚を望んだのでした。
しかし肝心のアントワネットはフランス語はおろかドイツ語の綴りさえ満足に書けないほどで、唯一のとりえは天使のように軽やかに舞うダンスだけです。
焦ったマリア・テレジアはアントワネットの教育をテコ入れするとともに、フランスに肖像画や良い評判をばらまくよう命令します。
プロデューサーとして尽力しながらもアントワネットの幼稚さにマリア・テレジアの胸には不安が広がるのでした。
アントワネットがウィーンのシェーンブルン宮殿でのびやかな毎日を送りながら成長している頃、フランスではオスカルが父親から武人としての教育を受け、厳しい剣のけいこをつけられています。
ジャルジェ将軍はアントワネットがフランス王太子妃になったらオスカルが守るのだと教え、オスカルもそれを胸に刻みます。
1769年、アントワネット14歳の時にとうとう正式にフランス王太子ルイ・オーギュストとの結婚が決まり、1790年、アントワネットはフランスに嫁ぎます。そして彼女は道中を護衛する若く美しい近衛連隊長付き女大尉オスカルを目にし、驚きます。
フェルゼンはドイツへ留学に向かいます。
ロザリー一家も登場、ジャンヌはすでに野心家です。
「新しい運命のうずの中に」感想その1
文庫版は1章1章が長いのでところどころに感想を挟んでいきますね。
30年ほど昔でしょうか、時期はうろ覚えなのですが、フランスの人々は日本人がマリー・アントワネットやフランス革命に詳しいことに驚いたといいます。
フランス人の我々だってマリー・アントワネットなんて歴史の時間にちらっと習っただけなのに、フランスを専門としている学者でもない普通の日本人たちが何故?と…。
私達だってもし普通のフランス人が徳川慶喜の妻・一条美賀子や、旧満州国皇帝・愛新覚羅溥儀の弟、愛新覚羅溥傑の妻・嵯峨浩について詳しかったら、何で~?と、ビックリしますよね。
今ではフランスでも「ベルサイユのばら」は愛されて、池田理代子さんは当地での数々のイベントに招かれていますし、ベルばらのお蔭でフランス革命やマリー・アントワネットの知識がついたというフランス人もいるそうです。2009年にはフランス政府から池田さんに多くの日本人がベルばらを通じフランスの歴史、言葉、文化などに関心を持ったとしてレジオン・ドヌール勲章シュバリエ章が授与されました(wikipediaより)。
そういったすごい歴史大河であるベルばらですが、ここまでは誕生から14歳の成長期で、結婚したマリーも、真面目なオスカルも容姿端麗ながらまだまだ子供といったところですね。
フェルゼンは二人との関りがない頃なので紹介程度にしか出てきませんね。フェルゼンといつも一緒のじいや、まだのんびりとお仕えしてますね。将来フェルゼンを心配してばかりになるとは露知らず…。
ところでアントワネットは嫁ぐまで、シェーンブルン宮殿では毎日お風呂に入っていたそうです。
それに引き換え、フランス貴族はあんなにきらびやかな服装や建築を極めているにも関わらず、全然入浴しなかったそうです。香水も体臭を誤魔化すために発達したそうですし…。
何でも体を洗うときれいになった毛穴から悪魔が入ってくると信じていたんだとか。
アントワネットはフランスで暮らすのはさぞ臭くて辛かったでしょうね、可哀想に。
「新しい運命のうずの中に」あらすじその2
マリーのベルサイユ宮殿での王太子妃としての生活が始まりますが、しきたりばかりで窮屈だと駄々をこね、お世話係のノアイユ伯夫人を困らせます。
夫である王太子は引っ込み思案の性格や包茎(ズバッ)であることなどから「陽キャ」のアントワネットとの仲がうまくいかず、最初の頃アントワネットは多くの時間をルイ15世の妹たちと過ごしていたようです。彼女たちに吹き込まれたり、母マリア・テレジアが娼婦を大嫌いだったこともあり、娼婦からルイ15世の公娼に成り上がったデュ・バリー夫人をアントワネットは毛嫌いし、声をかけようとしません。アントワネットとデュ・バリー夫人の関係はこじれ、フランス・オーストラリア同盟の危機を招く事態に。アントワネットは屈辱にまみれながら、デュ・バリーに声をかけるのでした。
オスカルは一歩引いたところから女の闘いを観察していましたが、アントワネットの誇りの高さに感心するのでした。
ジャンヌはフットワーク軽く母と妹ロザリーを見捨てちゃっかり侯爵夫人の養女に納まります。
1773年6月8日の王太子とその妃(アントワネット)のパリ訪問は民衆に大歓迎され、彼らに憎まれる未来が来るともも知らず、アントワネットも大感激しました。
翌年アントワネットはオスカルに警護を申し付け、パリのオペラ座の仮装舞踏会にお忍びで遊びに向かいます。そこにフェルゼンも参加しており、18歳の三人は運命の出会いを果たします。
「新しい運命のうずの中に」感想その2
今読み直すと、デュ・バリー夫人とジャンヌの逞しさが目立ちますね。
後で登場するポリニャック伯夫人にも言えることですが、貧しくてもタフな人は生き残るんだな~と感じ入りますね。
ただし更に成り上がろうと野心をメラメラ燃やして悪だくみに精を出すパワフルなジャンヌに対し、上り詰めて守りに入っている上、権力の後ろ盾である王は老齢のデュ・バリー夫人は常に不安を抱えるようになっていますね。
頼ってきたロザリーまで保身のために殺そうとするわ、後には王室に詐欺を仕掛け翻弄することとなるジャンヌの強烈さに、他のキャラクターは霞んでしまう程です。
青臭いながらも清潔なプライドを持っているアントワネットとオスカルも清々しくて気持ち良いですけど。
この頃は粗削りでちょっと古めの丸っこい可愛い絵柄なんですが、それがメインキャラクター達の若さとマッチしていると思います。後半、絵柄が洗練されてきて絵柄が大人っぽくなるのですが、キャラたちも大人になっていて、その絵柄の変化過程とキャラの加齢が丁度重なっているのもこの漫画の魅力のひとつと感じています。
【1巻2章】「栄光の座に酔いしれて」のあらすじと感想まとめ
「栄光の座に酔いしれて」のあらすじその1
フェルゼンは高貴な身分で高身長で男らしいイケメンで、ドイツで造兵学、イタリアで医学と音楽、スイスで哲学を学んできたインテリでもあります。フランスの社交界でモテないわけはありません。
そんな彼でも仮装舞踏会でとりこになった少女がフランス王太子妃と知り、ベルサイユに出入りするようになっても見つめるだけしか出来ません。
ある日アントワネットのお馬に乗りたいというわがままを皆で叶えてあげている最中、アンドレの不注意で馬が暴走してしまいます。オスカルが何とかアントワネットを救出しますが、王ルイ15世はカンカン、アンドレに死罪を命じます。オスカルの命を懸けた助命嘆願にフェルゼンとアントワネットが加勢、アンドレは何とか許してもらえます。これまでもいつもオスカルに付き添っていたアンドレでしたが、これからはオスカルの為に命を賭けることを誓うのでした。
「栄光の座に酔いしれて」の感想その1
アンドレ命が助かって良かったね!
だけどちょっとツッコミたいシチュエーションですよね。
いくらオスカルの側近としてベルサイユに出入りを許されているとはいえ、アンドレは平民身分です。
何故フランスで一番身分の高い女性に乗馬の指導をするのがアンドレだったのか、おかしいと思うんですけど。
近衛士官であるオスカルこそが最初からアントワネットを馬に乗せてあげれば良かったのでは・・・。
若かりし時にオスカルがアンドレを命がけで助けたというエピソードが必要だったのでしょうが。
ちょっと野暮なツッコミでした、すみません。
貴族の前で、国王に罵倒される平民アンドレが可哀想で、つい。
「栄光の座に酔いしれて」あらすじその2
ある日フランス国王ルイ15世が天然痘にかかり、王太子夫妻は法律で病室から隔離されます。
デュ・バリー夫人の(私のために)死なないで、国王!との必死の看病も空しく国王崩御。
ルイ・オーギュストとアントワネットは新国王ルイ16世と王妃となります。時に19歳と18歳。
デュ・バリー夫人はベルサイユから追放されてしまいます。
オスカルはフェルゼンに王妃となったアントワネットと噂になるのは良くないと忠告、フェルゼンは思いを秘めたまま帰国します。
そしてマリー・アントワネットは王妃とは誰にも指図されず好き勝手にふるまえる立場と解釈、地位を望んできたものにもホイホイ安請け合いをしてしまいます。
アントワネットは大好きなオスカルも近衛連隊長へと昇進させます。
オスカルは近衛連隊長の座は受けるものの、給与や年金は上げないでくれと頼みます。
「栄光の座に酔いしれて」感想その2
ルイ15世が崩御した直後、貴族たちも皆、新国王様おめでとーっと、お祝いムードになった描写にちょっと引きました。いや、少しは喪に服してから祝おうよ、と思って。
それだけに国葬シーンでオスカルが涙していて、さすが立派なお人や…と感心いたしました。
アントワネットのような能天気ちゃんが国政の人事も思いのままにするなんて恐ろしすぎます!
トップが無能でも障害があっても無難に国の運営が進むようなシステムを考えた徳川家康はやはり偉大ですね。
「栄光の座に酔いしれて」あらすじその3
アントワネットが己の権力を満喫し始めた頃、ロザリーはじめ国民はますます貧しさに苦しみます。
ロザリーは思い余って貴族に身を売ろうとしますが、幸い馬車に乗っていたのはオスカル、市民の困窮ぶりにショックを受けつつも、お金だけを恵んで去ります。
しかし公爵が貧しさのあまり盗みを犯した5歳のぼうやを銃で撃つところを目撃、怒りのあまり晩餐会で喧嘩を売り、アントワネットから謹慎を申し渡されます。
ジャンヌは恩人の侯爵夫人を殺害、遺産を手に入れます。葬儀でローアン大司教と知り合ったジャンヌは、いいカモ見っけ!とほくそ笑みます。
アントワネットはポリニャック伯夫人と出会います。
その儚げな美しさと甘い雰囲気に夢中になったアントワネット、とんでもない額の国費を彼女に貢ぎ、彼女の夫には郵政大臣の地位をプレゼント。他の貴族の反感を買います。
でもそれ国民の税金だから!というメルシー伯の諫言にも意地悪!と泣くばかり。
オスカルは謹慎中というのに領地を廻り、後に革命の中心人物となるロベスピエールと出会い、彼から新国王夫妻に国民は失望しているとの声を聞き危機感を覚えます。
アントワネットはそんなことは露知らずベルタン夫人のドレスに夢中、オーダーしまくりです。
「栄光の座に酔いしれて」感想その3
ポリニャック伯夫人の肖像画をご覧になったことありますか?
本当に可愛くて綺麗なのです。
キレイなものが大好きな幼い王妃が、あんな美しい女性に側にいて欲しいと思っても当然かもしれません。
フェルゼンへの長きにわたる恋心を持ち続けたアントワネットですが、当時のフランス貴族と比べるとむしろ貞淑と言ってもいいし(王妃は普通の貴族ほど自由でないし、まだ処女というのもありそうですが)、異性とのラブアフェアよりむしろ「百合」っぽい同性とのキャッキャウフフの方がお好きそう。
好きな人が喜ぶ顔を見るのが好きな気のいい女性ですよね。
でもこんな統治者の嫁はやはり困りますね。国王ルイ16世がしっかりしていればまだ良かったんでしょうけれど。
いつの時代でも、自分の頭であまり深く考えず、同情しやすいお人好し、なのにお金はたんまり持っている女性なんて、詐欺師のいいカモなのでしょうね。
アントワネットを賭博に引き込んでまでお金を巻き上げるポリニャック伯夫人、欲の塊です。
「栄光の座に酔いしれて」あらすじその4
ジャンヌはローアン大司教に取り入って、使いっぱしり兼夫のニコラスを近衛連隊長付き大尉にしてもらい、宮廷へ近づく足掛かりにします。
ロザリーの母は何故かポリニャック伯夫人の馬車の前へ飛び出し、引き殺されてしまいます。
本当の母はマルティーヌ・ガブリエル・ド…と告げながら母は亡くなります。
ロザリーはポリニャック伯夫人を殺そうとして、人違いでオスカルの母を襲い、その縁でジャルジェ家で暮らすことになります。
ある日大物夫人の舞踏会が開かれ、オスカルはロザリーの仇の情報を得るために彼女をそこへ連れて行きます。
そしてロザリーは大物夫人を騙して屋敷へ入り込んだジャンヌや、ポリニャック伯夫人の娘シャルロットと出会うのでした。
そこへフェルゼンが4年ぶりに姿を現して…。
「栄光の座に酔いしれて」感想その4
ポリニャック伯夫人、王妃の寵愛をいいことにやりたい放題!
したたかなやり手ですが、見た目は天使のような美しさで、振る舞いはまるで女神のよう。
アントワネットはもう彼女なしでは生きられないといった感じです。
権力者の欲望を抑えるシステムが働かないというのは本当に恐ろしいことですね。
しかし、アントワネットと大政治家のマリア・テレジアが母娘だとは…。
歴史とは皮肉なものですね。
ジャンヌも頑張っています。努力の方向は全くもって間違っていますが、凄まじい行動力です!
美貌の持ち主なのに、権力ある男の寵愛で良い暮らしをしようとはしません。
男であろうと女であろうと全ては私の踏み台!
もし殺人や詐欺で裁かれた時に(殺人はばれてませんが)、ジャンヌが裁判で
搾取で民衆を飢え死にさせている貴族の方がよっぽど殺人者じゃないか!
あたしら平民からお金を巻き上げている詐欺師で泥棒なのは貴族じゃないか!
と主張したら、民衆に共感を得ること間違いなしです。
ジャンヌは100%自分の為に悪さをしているのですが、ジャンヌはそんな詭弁をとっさに言える頭脳の持ち主です。
実際のセリフではないですが、もしジャンヌが言ったら民衆にとっては紛れもない事実ととらえるでしょう。
そんなジャンヌにアントワネットは首飾り事件を仕掛けられます。
お人好しで苦労知らずのアントワネットが勝てる相手ではないのです。
1巻はここまでです。歴史の波乱の近づいている足音に気付いているのはオスカルだけのようです。
苦労症ですね、オスカル様は…