4巻まで進んできました。
フランスも、そしてオスカルとアンドレの関係も大きな転換を迎えます。
激しく熱く、そして儚い人間たちのドラマが繰り広げられます!
【4巻1章】「美しき愛のちかい」のあらすじと感想まとめ
「美しき愛のちかい」あらすじ その 1
オスカルを心配し過ぎたためか、ばあやのマロン・グラッセが病の床に就きますが、ジャルジェ家では家族同様に扱い、医師にも診せ、療養させます。
休暇が終わっても衛兵隊の勤務に来ないアラン。オスカルはアンドレや部下と彼の家に向かいますが、途中でロザリーの夫となったベルナールの熱い演説を聞き、ロザリーの幸せを確信します。
アラン宅に着くと異臭が満ちています。アランは自殺した妹ディアンヌの遺体の側で精神のバランスを崩しています。貴族とは名ばかりの貧しい家のディアンヌは、婚約者に捨てられたのでした。
アランは衛兵隊へ戻ると、妹と親交のあったオスカルに形見として彼女の髪を渡し、オスカルはそれをアランの妹を思う気持ちと共に受けとるのでした。
オスカルは今まで一度も作らなかった自分の肖像画を描かせると言い出し、家族を驚かせます。
画家は目の前に本人がいると気付かず、ルイ16世とアントワネットが王太子とその妃だった時のパリ訪問で見た、きらきらと輝く美しい少年近衛兵を描きたかったと思い出話をするのでした。
王室は新税や借金について高等法院との対立が深まり、三部会開催に追い込まれます。
1789年5月5日、王の布告により三部会が始まります。
アントワネットは刻一刻と悪化して行く王太子ルイ・ジョゼフの容態が心配で気もそぞろでしたが、自分の登場に貴族でさえ誰一人拍手を送らないことから、フランス中から自分だけが憎まれていることを思い知るのでした。
とうとう王太子ルイ・ジョゼフ逝去。オスカルも悲嘆にくれます。そしてあろうことか、王太子の葬儀を行う費用さえ無いほど国庫は空っぽだというのです。アントワネットは国民のことも考えず贅沢をしてきた報いを受けるのでした。
「美しき愛のちかい」感想 その 1
話は暗くなるばかりです。
アランの最愛の妹は貧乏ゆえに婚約者に捨てられて自殺し、ばあやは病に伏し、王太子ルイ・ジョゼフは幼くして世を去ります。
このルイ・ジョゼフが良い子過ぎて泣けるのです。母に心配かけてごめんなさいと謝り、姉弟には両親を独り占めしてごめんなさいと謝り・・・。でも迫りくる革命で、王の一家は地獄のような辛い目に遭いますから、病弱な彼にそれを見せずに天に召そうとした神の計らいだったのかも知れません。
勢いがあるのは平民議員たち(側)だけです。
「美しき愛のちかい」あらすじ その 2
三部会の警護でフランス衛兵隊も勤務が続き、オスカルも疲れきっています。オスカルはアンドレにもたれて寝てしまいますが、ふと目を覚まして、もうどこにも嫁がないと伝え、アンドレの目に嬉し涙が光るのでした。
三部会は第一身分(僧侶)、第二身分(貴族)、第三身分(平民)が別々に会議をするので話がまとまるはずもありませんでしたが、第一、第二身分の一部が第三身分と合流し、「国民議会」と名乗ります。危機感を募らせた王室は、議会場を封鎖して平民議員を締め出します。
任務を行うフランス衛兵隊は民衆から罵倒され、悔しさに涙するのでした。
国民議会議員はテニスコートの誓いを行い、一層の団結を強めました。
オスカルはアンドレの着替え中の裸を偶然見てしまい、異性として意識し狼狽します。
混乱が収拾しないため、国王は三部会を再開させますが、平民議員はまたも正面玄関から入れてもらえないという嫌がらせを受けます。このような仕打ちが却ってロベスピエールら平民議員たちの心を熱く燃えさせるのでした。
フランス衛兵隊の多くは平民たちなので、命令に従うのが辛いと泣きます。怒りを抑えられないアランは貴族議員の集う会場へ剣を持って向かおうとして、オスカルに止められます。アランは近付いてきたオスカルへの気持ちを抑えられず、キスをしてしまいます。
アンドレは鬼の形相で間に入りますが、しかしアランの報われない恋心の切なさも充分に理解するのでした。
「美しき愛のちかい」感想 その 2
とうとう三部会が開かれるのですが、これは王室が、増税と新しい借金を希望したのに高等法院が許可せず、どうしてもというなら三部会で話し合えと言われてしまったから。高等法院は庶民のために新税に反対したのではありません。王室はこれまで免税特権のあった僧侶や貴族から税を取ろうとしたのです。貴族たちは高等法院と組んで王室の提案した新税に反対しました。それなのに、高等法院は王室に反抗しているという理由で、平民から支持を得たのです・・・どれだけ嫌われているんでしょうね、王室は。
オスカルもフランス衛兵隊も、平民議員に酷い仕打ちをする王室からだんだんと心が離れて来ています。
そして雨に打たれても熱く語るロベスピエールの言葉に心打たれるオスカル。
こういった、オスカルと衛兵隊が後で平民側につくことに説得力を持つシーンがきちんと描かれていて上手いなと感心します。
アランはオスカルより大分年下ですよね。この時オスカル33歳。アランはおそらく20代前半でしょうか(経済的な問題で婚期がやや遅れたディアンヌが18歳として、兄のアランはそれ位かなと)。34歳のアンドレの方が若く見えます(失礼、アラン)。歳が離れていても、気高く美しいオスカルに惹かれずにはいられなかったのですね。でも無理チューはいけません。
「美しき愛のちかい」あらすじ その 3
国王は身分原理主義者の強硬意見を受け、国民議会を解散させ元の三部会に戻すよう指示しますが議員たちは聞きません。
軍には国民議会を議場から追い出すよう命令が来ますが、オスカルも部下の衛兵隊第1班も従いません。ブイエ将軍はオスカルから軍務証書を取り上げ、第1班12名を銃殺にしようとします。衛兵隊の代わりにジェローデル率いる近衛隊が平民議員を追い払うために出動、国民議会側に付いているラファイエット候ら貴族と睨み合いになります。そこへ脱走してきたオスカルが立ちはだかります。ジェローデルは愛するオスカルのために退却します。
国王に歯向かったオスカルに父は激怒、彼女を殺そうとしますが、アンドレが命がけで邪魔をします。父はアンドレの覚悟に折れ、国王からのお咎めも無いことを伝えます。
オスカルはアンドレに愛してると告白。アンドレの長年の想いは報われ、二人は恋人同士となるのでした。
オスカルは、ロザリーの夫ベルナールに頼み、民衆に兵士の釈放要求をさせます。運動は成功し、オスカルと兵士たちの絆はより固くなるのでした。
「美しき愛のちかい」感想 その 3
オスカル、気持ちは分かりますが、組織にこんな人がいたら上司は頭が痛いでしょうね。武器は国から与えられているのに、己の正義感だけで行動を決めていて。利害だけで動く人よりやっかいそうです。
ジャルジェ将軍は主人に歯向かうアンドレを許します。ばあやのためとか言って。この家の人たちは結構ばあやとアンドレに甘いです。アンドレの決死の覚悟が伝わったのでしょうが。
オスカルはアンドレに愛の告白をします。アンドレの気持ちは分かりきっているのに、必死でポエミー。でも美しいオスカル様ならドラマチックで絵になります。
3高(古い。高身長・高学歴・高収入のこと)男のジェローデルより一緒にいて楽な幼なじみのアンドレを選ぶ。仕事を持つのが当たり前の現代の若い女性なら自然な選択なのかも。でもベルばら連載当時はまだ女性は今よりずっと抑圧されていた時代なので、オスカルの選択は革新的に感じられたと思います。
アンドレは共働きやイクメンにに向いてそうですよね。
「美しき愛のちかい」あらすじ その 4
オスカルはアントワネットへの挨拶に向かいました。
王妃はフランス全土からパリとベルサイユに軍隊を召集し、平民議会を解散させるとの計画を教えます。オスカルは、フェルゼンは必ず王妃のために戻るだろうと意見します。
オスカルの父、ジャルジェ将軍はアンドレにお前が貴族であったならと言い、影としてオスカルを守れと頼み、アンドレもその覚悟だと伝えるのでした。
しかし、アンドレの目はほとんど見えなくなってきていました。
そして、オスカルの喀血の程度も悪化してきています。
フェルゼンは家族の反対を振り切って、アントワネットのため、スウェーデンから危険なフランスへ向かいます。じいを連れて・・・
大蔵大臣ネッケルは市民を刺激しないために軍を撤退させるべきと国王に進言しますが、強硬な平民排除派が反対します。
彼等の意見を受け、国王はネッケルを罷免します。
国民に人気のあるネッケルが罷免されたことで、平民たちは怒り、武器を取り立ち上がります。
そして動乱に対処するため、オスカルのフランス衛兵隊にも出動命令が下されたのでした。
「美しき愛のちかい」感想 その 4
機を見るに敏な貴族や、あくまで国王を君主にした民主的な国にしたいと理想を持つ貴族などは国民議会がわにつきますが、その分、国王の周りは王政原理主義者だけが残っていて、現実的な政治判断が難しいようですね。
アントワネットはまた、国王と国民議会の橋渡しをしてくれていたミラボーを嫌っていたといいます。その理由を寡聞にして知らないのですが、放蕩児だからか醜いからだからでしょうか。
清濁併せ呑む度量がないと政治はむずかしいですよね。
フェルゼンのじいやさん、フェルゼンから面と向かって「じい、付いてこい!」と言われたら、今のフランスに行くのはおっかないからイヤじゃ~とは思っていても言えなかったでしょうね。
【4巻2章】「みずからのえらんだ道を」あらすじと感想まとめ
「みずからのえらんだ道を」あらすじ その 1
7月13日のパリへの出動命令、衛兵隊は最初は市民へ銃を向けるのはイヤだと渋りますが、オスカル自ら指揮を取るならと従う決意をします。
アンドレは、オスカルにも衛兵隊員にも、目を心配され来ないよう説得されますが、彼の何処までもオスカルと行動を共にするという決意は変わらないのでした。
オスカルはパリに行っちゃイヤだと泣くばあやを宥めてあげます。
そしてついにオスカルの肖像画が完成。それはオスカルが、かつて憧れた、キラキラした近衛兵の少年だと気付いた画家が、当時のイメージで気高い軍神のように描いたものでした。
オスカルはその絵に心洗われ、己の信念を裏切らず生きようと改めて決心するのでした。
しかしアンドレはもうどんなに願ってもその絵を見ることは叶わないのでした。
オスカルの結核は進行し、酷い喀血を起こします。
その夜、パリ出動前夜。オスカルはアンドレを部屋に呼び、二人は永遠の愛を誓い、夫婦の契りを交わします。
翌日、フランス衛兵2個中隊はパリ、テュイルリー宮広場へ出動。到着前にドイツ騎兵と民衆の乱闘が始まったと報告を受けます。
オスカルは女伯爵の身分を捨て、人民側に付くことを宣言、衛兵隊ももちろん彼女の選択を支持し、共に戦う決意をします。
フランス衛兵隊が人民側に付いたことで勢いづく民衆。衛兵隊たちはオスカルの指揮の下、力を合わせて戦い、アンドレも仲間の指示をもらいながら銃を撃ち続けます。しかし衛兵隊も敵の弾に倒れてゆき、動揺したオスカルにスキが生まれ、敵に狙われます。そこへアンドレが見えないながらも必死に庇いに向かい、オスカルの楯となって撃たれてしまいます。オスカルはアランに守られ、アンドレを背負い戦場を離れます。
アンドレが死ぬ間際にオスカルの顔を触って確かめたことで、オスカルはアンドレの目が全く見えてなかったことを知り衝撃を受けます。アンドレの死に取り乱し、敵の砲弾に撃たれようと飛び出すオスカルをアランが止め、オスカルはアンドレの「武官はどんなときでも感情で行動するものじゃない」という言葉を思い出し、だけど人間だ!と嘆き狂うのでした。
「みずからのえらんだ道を」感想 その 1
ベルばらのクライマックス・・・!!!
漫画も革命もまだまだ続くのですが、オスカルが主人公ならばベルばらはこのパートがクライマックスだと思うのです!
社会情勢の不穏さに加え、オスカルもアンドレも自分の体調にも不安を覚えていたはずです。
でもだからこそ、死を怖れずに行動出来たのかも知れません。
アンドレは愛して愛して愛し抜いたオスカルと夫婦になり、翌日彼女を守って命を落とすのです。その事に悔いは無いでしょうが、革命の混乱の中、オスカルを残して先立つのは心配だったでしょうね。
アンドレの最後にアランが立ち会っているのは、二人が真の友人となったことを表していると思います。
「みずからのえらんだ道を」あらすじ その 2
翌日、1789年7月14日。
バスティーユの大砲が民衆に向けられ、怒った民衆は廃兵院を襲い、銃と大砲を奪いバスティーユの周りへ続々と集まりました。
オスカル率いるフランス衛兵隊も向かうことになりますが、オスカルはいつものように出発前にアンドレに声をかけてしまい、いつもいつも側にいた彼を失った悲しさが改めて込み上げ、自分も共に死んだのだと、しばし兵の前で泣かせてもらうのでした。
バスティーユ側は平和的に話し合うと市民側を騙して閉じ込め、銃で狙い打ちします。
戦闘が始まるも、市民側は大砲の扱いが分からず、劣勢に立たされます。
そこへオスカルたちフランス衛兵隊が大砲を抱え到着。
バスティーユへの反撃を開始します。
「みずからのえらんだ道を」感想 その 2
「アンドレ行くぞ!用意はいいか」
オスカルがいつものように言ってしまってから、そうだった、もういないんだ・・・と気付き、だけど信じられないと泣くシーン、切ないです。
7歳で出会い、常に一緒だった幼なじみ。身分の違いを越えて、かけがえのない夫となった翌日にオスカルはアンドレを失うのです。
オスカルが自分も死んだと思っても仕方ないですよね。
それでも、市民のため、自分に付いてきてくれている衛兵たちのために、オスカルはバスティーユの戦いへと向かうのです。
私情に耐え、祖国の革命のために戦うオスカル様、立派です。
歴史の歯車は大きく回り、そしてベルばら文庫版、最終巻に向かいます。